Review

◆和棉(にこわた) オーガニックコットン越中 (00/1/2)

 冬になると、綿製の越中が具合いい。
 そこで本日は、和棉・橋本さんのオーガニックコットン製越中褌をご紹介しよう。

 オーガニックコットンとは、読んで字のごとく、有機栽培の綿だ。
 最近注目を集めているこの有機綿、肌の弱い人にもいいということだから、下着生地には好適。
 また土壌の保全など、環境にも有益だという。

 オーガニックコットンのもうひとつの特長は、その色。
 白のほか、茶色、緑灰色などがある。もちろん天然色だ。
 右写真は、その茶綿を使った越中。チェック地がお洒落だ。
 和棉ではそのほか、無地の茶綿越中も作っている。
 縫製も上々だ。

 こうした茶綿を使った生地は、オーガニックコットン先進地のアメリカ製。
 晒しの木綿地に比べ、やや厚手で、ざっくりしたナチュラル感覚。
 冬場にはまことに具合いい。
 価格は2500円。
 注文製作のため、メールにてお問い合わせのこと。


◆一衣舎(いちえや) 越中褌

 おそらく、日本でいちばん素材にこだわって越中づくりをしている人。一衣舎の和裁士・木村幸夫さん。
 真木テキスタイルスタジオとも前々からおつきあいがあり、また、ともに野蚕学会のメンバーでもある。
 8月末に、一衣舎オリジナルの越中を四点いただいたので、順次ご紹介しようと思う。
 左から、1ロウシルク、2麻、3中国柞蚕、4変り織精華
 2を除いてすべて絹である。

 自らも越中を愛用する木村さん。
 使用者の視点から、素材ばかりでなく、デザインにも気を配っている。
 注文生産なので、メールでお問い合わせのこと。

* * *

その4「変り織精華」(99/10/3)

 上の写真、右端。
 変り織精華というのは、一衣舎さんによると、洗える襦袢として開発したもので、福井で織っている。
 確かに、羽二重(いちばん代表的なサラッとした平織の絹織物)とは、少し風合いが違う。
 そこでルーペで観察してみたところ、これは楊柳縮緬という縮緬(ちりめん)であるらしい。

 縮緬とは基本的に、ヨコ糸に強撚糸(ヨリをかけた糸)を使って、「しぼ」という細かな縮みシワを出した織物。
 ヨリには右ヨリと左ヨリがあって、普通の縮緬はその両方を交互に使う。
 この楊柳縮緬というのは、一方向のヨリ糸のみを使って、タテ方向のしぼを出す。別名、片縮(かたちぢみ)。

 縮緬の特質である細かな凹凸により、皮膚との接触が点と点になり、サラリとした使用感。
 同じく細かな凹凸のせいで、羽二重等に比べ、シワになりにくい利点がある。
 3000円。

 一衣舎さんの越中は、オーダーメードが基本。
 それで注文から一週間ほどかかったりするのだが、長さなど自分の好みに合わせられる。
 たとえばこの「変り織精華」は、前垂れの長さが103cmほどあって、普段使いにはちょうどいいくらいの長さ。
 自分の体格とか、TPOに合わせ、前垂れやヒモのサイズを調整するといいだろう。
 旅行の際には短めにするとか。

* * *

その3「中国柞蚕」(9/28)

 上の写真、右から二番目。
 中国柞蚕とは、当スタジオがよく扱うインドのタッサーシルクと近縁。「柞」というのはクヌギ科の樹木の総称だそうだ。
 日本の天蚕などとともにヤママユ科に属し、カイコガ科の家蚕(普通のおかいこ)とは別種。
 この科に属する繭は、一般に野蚕と呼ばれる。そこから採れる野蚕糸は、家蚕糸とはまた違った特性を持つ。
 野蚕繊維は家蚕繊維と違って多孔質なので、より下着向きではないかと言われている。(それについてはまた別項で述べよう)

 この越中褌、市販のものでは、唯一、野蚕糸を使ったものだろう。
 タテ糸には家蚕の生糸、ヨコ糸が中国柞蚕。
 色は柞蚕特有の淡いクリーム色だ。絹というのは黄変しやすいものであるし、そもそもが下着なので、天然で褐色を呈する野蚕は、その意味でも気楽だろう。

 実際につけてみると、野蚕特有のサラサラした触感が心地良い。
 麻製に次いで、夏もいける。
 綾織り(機械)を施してあるせいか、一般の絹製よりシワになりにくい感じ。

 一衣舎の場合、すべてヒモに絹を使っている。これは結び心地が良く、解けにくいから。
 ほかの一衣舎オリジナルは家蚕の羽二重使用だが、この製品のみは褌地と同じ中国柞蚕。
 野蚕繊維の断面は扁平なので、ヒモの解けにくさという点では、家蚕以上なのではないかと思われる。
 価格3000円。

* * *

その2「麻」(9/22)

 上の写真、左から二番目のもの。
 「麻」と一口にいっても、いろんな植物繊維が含まれる。
 大麻や苧麻(からむし)、亜麻や黄麻などだ。これらは植物学的にも種類が違う。
 たとえば大麻はクワ科、苧麻はイラクサ科、亜麻はアマ科といった具合。

 いずれもサラッとした感触が特長。
 日本に古来からあったのは大麻と苧麻で、越後上布なども苧麻で織られていた。
 今でも沖縄の宮古・八重山などで細々と苧麻の手紡ぎ手織布が織られているが、全国的に見て、もはや大麻も苧麻も消えかけている。(苧麻の場合、「紡ぐ」ではなく、「績む」と呼ばれる)
 現在「麻」として出回っているのは、ほとんどが亜麻で、その原料はおおかたヨーロッパから入ってくる。

 この越中の生地も、越後・小千谷で織られているそうだが、おそらく原料糸は亜麻であろう。
 麻特有のひんやりした感触が心地いい。
 今夏木村氏は、この麻製と中国柞蚕製をつけ比べたのだが、涼しさという点で、麻が僅差の判定勝ちを収めたようだ。

 「野蚕スペシャリスト」真木千秋の意見も同様である。
 絹は保温性が高い。野蚕布にしてもそれは同じで、清涼感においては麻の方が勝ると言う。
 麻はまた、絹同様、放湿性においても優れている。乾きやすいのだ。
 というわけで、夏の越中はコレで決まり! かもしれない。
 価格は3000円。
 ヒモは絹製。これは、結んだ場合、解けにくいからだ。
 この辺にも一衣舎さんのこだわりを感じる。

 本体の麻素材は、機械紡績の機械織りなので、特に目覚ましいというものではない。
 しかし、それも致し方あるまい。
 手績みの苧麻糸といったら、ほとんどダイヤのごとき存在だからだ。
 ヨコ糸に入れ込んで手織すると、たちまち越中一丁の価格が二万ほどにもなるだろう。
 タテまで手績み苧麻糸にしたら、更に倍ではきかなくなる。
 越後上布…
 究極の越中…

 しかしだ、われらが珍宝金玉には、それくらいの価値があるのではあるまいか。
 

* * *

その1「ロウシルク」(9/20)

 Raw Silk とは、インドでよく使われる言葉だが、「素朴なシルク」ほどの意味だろう。
 この素材もインド産。
 おそらくは、市販されている褌の中で唯一、手紡ぎ手織の生地を使ったものであり、たぶん現在手に入る最高の越中であろう。

 右写真がその生地(原寸大)。
 タテ糸に生糸、ヨコ糸にはおそらく玉糸が使われている。いずれも家蚕。
 玉糸というのは、玉繭(ひとつの繭にふたつ以上のサナギがいる)から手で紡がれる糸で、節のあるのが特長。
 糸が不均一なので、機械織りにはなじまない。手織布のヨコ糸に入れられることが多い。
 この種の手織布はインドでは「デュピオン・シルク」と呼ばれる。

 とにかくつけ心地がいい。
 一衣舎オリジナルの中でも、一押し。
 価格は3000円。これは安い!

 今回の生地はたいへん上質のものであったが、「デュピオン」を始めインドRaw Silkの問題点は、品質が一定しないことにある。
 糸産地に近い田舎で手織されているせいで、なかなか品質管理が難しのだ。
 だからインドRaw Silk製品の場合、今回の越中みたいに優れたものに出会ったら、「即、買い」なのである。なぜなら、二度と同じものに出会えるとは限らないからだ。

 なぜ手紡ぎ手織の生地が気持ちいいかというと、布の表面に不規則な凹凸が現れるからだ。
 すると肌と布との接触が、点と点になる。機械紡績の機械平織り布みたいに、ベターっと肌につくことがない。
 そしてその接触点が不規則、すなわちファジーであることが、更に快適感を与えるわけだ。
 絹が綿に比較して下着生地として優れていることはデータ的にも明らかなので、こうした手紡ぎ手織の絹布は最高の褌素材と言えるだろう。

 しかし木村氏も私も、更に先を見ているのである。
 おそらくは最強の褌素材…、それは野蚕の手紡ぎ手織布だ。
 それについてはまた近々触れることもあるだろう。


◆「伝統芸術を着る会」絹・綿製 越中褌 (9/16)

 この「伝統芸術を着る会」というのは、作務衣屋さん。
 通販が主力で、よく新聞にも広告が掲載されているので、知っている方も多かろう。
 私も作務衣を常用しているのだが、何よりも布の風合いが一番大事なので、カタログだけで注文するということはない。
 この作務衣屋さんの場合、東京・お茶の水にショールームがあるので、よくそこへ出かけていって、実物を触ってみる。

 初めて越中に出会ったのも、ここのショールーム。
 およそ二ヶ月ほど前のことで、実は、「滝行」用にひとつ欲しかったのだ。
 カタログによると、絹製一種、綿製が三種(白、赤、藍)。
 価格は絹が二枚一組で5000円。綿が三枚で4500円。
 まず絹のを買って、具合が良かったので、更に絹と綿のものを買い足した。

 写真右が絹製。
 機械織りの羽二重だ。生地屋でよく見かける家蚕布。縫製はおそらく中国だろう。
 長さは96cm。私(176cm)にはちょっと短めという気もしないではないが、パンツ(ゆったり目のズボン)内に着用することが多いので、前垂れが邪魔にならず、かえっていいかも。
 とにかく非常に薄いので、女性のパンティなみにかさばらず、乾燥もめっぽう早いので、旅行には超便利。
 これだけ薄くても、ちゃんと下着としての機能は果たすのだから、越中というのはすごい。

 余談だけれども、夏場、これをつけていれば、突如水を浴びたくなっても大丈夫。
 水から上がって、この越中を解いて体をふき、よくしぼって、また着用すれば、そのうち乾いてしまう。
 タオルも着替えもいらないわけだ。
 ただし、あまりに薄いため、水から上がると尻にぴったり張り付き、透けて見える。
 周りの人はちょっと恥ずかしいかも。

 写真左が綿製。
 藍染めということだが、色合いは浅葱(あさぎ)といったところ。
 やはりおなじみの機械織り綿布で、かなり厚手。
 着用するとけっこう暑いので、夏向きではない。
 ただ、厚手のため濡れても透けないから、水浴びにはいいかも。

 この会では六尺も扱っている。
 ただ、最近、送られてくるカタログには、褌の記載がない。
 やめちゃったのかな?
 関心のある人は、フリーダイアル0120-77-0756まで。


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